makiのきまぐれ読書日記

読んだ本を忘れないように。。。

伍之続「あやかし草紙」より第四話「あやかし草紙」

宮部みゆきさんの三島屋変調百物語伍之続(第5巻)「あやかし草紙」より

第四話であり、表題作の あやかし草紙。

 

なんと、この第四話では、語り手が二人もいるのである。貸本屋瓢箪古堂の若旦那勘一と、都合六度も嫁に行ったという婆様。そもそもこの章は勘一さんの語りの章だと思っていたから、尻切れトンボに語りを終えた後、正規ルートの灯庵老人からの語り手に、なんだ?と首をかしげたものの。。。

「つかみどころのないひょうひょうとした人。何かをわかりきってしまったみたいに澄んだ目で、いつも風の向こうを見ているような人。」という共通項で、おちかの人生を変えるのである。。。

 

まずは、勘一が経験した、自分の死に際がわかるという書物の写しを斡旋した井泉堂とそれを写した栫井様の話で、「予言」についての話が興味深い。

人の心が、予言が成就するような方向に、なんとなく偏っていってしまう。

---これは予言されていた。---予言のおかげで助かった者もいる。

なんていう風評があれば飛びついてしまう。そう信じれば少しは慰められ、心が落ち着くからである。

「ですから、予言というものは、思いのほか当たるんでございますよね」

ふむふむ。である。

好きも悪きも成就するような方向に偏っていく。。。ホントその通りなのだけれどもこれを機に、良い予言(!?)に目を向けて、良い方向に偏った生き方ができるように心がけたい。と思う私なのである。

 

表題であり、そして富次郎が始めた変わり百小野語りを絵にかいて聞き捨てにするという、その「絵を収める箱」となった「あやかし草紙」

中身は富次郎の描いた絵だけれど、これは画集の題ではない。あの桐箱は書物だ---

「三島屋さんが黒白の間で聞き捨てた様々な世のあやかしを預かり置くあの桐箱は、この先、変わり百物語の大切な介添え役になりましょう」

大事なところだと思うので、とりあえず、書き記しておくのだけれど。。。

 

 

おちかの兄が嫁を貰ったこと。伊兵衛が風邪で寝込んだこと。富次郎が帳場に座ったこと。おちかが決めたこと。訪れた瓢箪古堂の丁稚さんが、宿の名前がついてたこと。

なんだか綺麗(?)につながっていって、物事が動くときなんて、だいたいこんな感じなんだろうな。なんて、思うものの、一抹の寂しさも感じつつ。。。

 

さてさて、勘一が書き写した(であろう)井泉屋の本には、はたしてどんな結末が書いてあったのか・・・何はともあれ、おちかの未来に幸あれと願うばかりなのである。。

 

「坊ちゃんや、よく笑う人をおもらいなさい。」

 

勘一のばあやの願いが、よき予言となりますように☆