makiのきまぐれ読書日記

読んだ本を忘れないように。。。

優しい人たちの物語。~星たちの栞~「活版印刷三日月堂」シリーズ1

この本を(メルカリで)買ったのは2021年1月の事。いや~、随分と寝かしてしまいました。風味的に、村山早紀さんのコンビニ黄昏堂的かしらね。。。と思いつつ。後回しになっていましたが、東野さんやら宮部さんの新作発売の隙間に。。。と思ったら、めっちゃ優しい物語で。。。シリーズ読み進めたくなっちゃいますね。でもこれは、1話ずつ、まとめといたほうがいい本。。。ってことで。。。

ほしおさなえさん「活版印刷日月堂 星たちの栞」です。

 

 

登場人物は、まず、ハルさん、川越運店一番街営業所の所長(?)。

その運送屋さんと同居する川越観光案内所スタッフの柚原さんとアルバイトの大西君。

そして同じく川越商店街(?)でガラス店兼工務店を経営、時には観光客向けの体験工房も開く人気店の葛城(かつらぎ)さん。

この4人はジョギング仲間でその途中、ひょんなことで入った路地で、空き家のはずの建物に電気がついてるのを見つける。

鴉山(からすやま)稲荷神社の近くの白い建物、「三日月堂

店主夫婦がなくなって空き家になっているはずなのに。。。そこから出てきたのが店主夫婦の孫、弓子さん。

弓子さんが引っ越してきて、最初はハルさんの運送屋でアルバイトを始めるが、ひょんなことで、活版印刷の印刷屋を再開する。ことで物語は始まる。その再開のきっかけとなった物語が第1話。

 

「世界は森」

ハルさんの息子森太郎くんがこの度高校を卒業して北海道の大学で森林科学を学ぶために一人暮らしを始める。母一人子一人の親子。離れて暮らすにあたり卒業記念のプレゼントを考えていて、弓子さんと再会したことで、子供時代のあこがれ、活版印刷の名前入りのレターセットはどうかと考える。

文具フェチの大西君が、それっていいですよ!活版印刷も、見てみたい!!ってことで印刷所を訪れ、機械を動かしたことが、スタート。

4人から広がる、弓子さんちの活版印刷所と人々との出会いが描かれる。。もちろん人はあったかく、そして、名言が。。。この章では

名前って、不思議だな、って。自分のものだけど、自分では決められない。ほかから与えられるものですよね。なんだか親と子をつなぐ蝶番みたいだなぁ、って。

いやね、直接伝えられない言葉を、三日月堂のレターセットで伝え合う愛が、素敵でした( *´艸`)

 

「八月のコースター」

ハルさんから三日月堂の紹介を受けたコーヒーショップ「桐一葉」を伯父から引き継いだ僕は岡野。店においたマッチがもう時代じゃなくなったので、「ショップカード」を作ってみれば?活版印刷で!ということで弓子さんとの作業が始まる。

試行錯誤のショップカードの作成から、高浜虚子の俳句からコースターも完成!

俳句、そして弓子さんの雰囲気から大学の俳句部で出会った原田を思い出す岡野。

過去から逃れ、今の自分を見つめなおし、そして、一歩踏みだす。弓子さんとの出会いのおかげで。。。

素敵であり続けるには、ちょっとずつ更新しなくちゃいけないのかもしれませんね。

だれも、だれかの代わりになんて、なれませんよ。

そして、三日月堂も一歩進歩。ガラス戸の中のカーテンをやめて中を見えるように!

 

「星たちの栞」

桐一葉の俳句入りのコースターをもらった高校の国語教師で文芸部の顧問の遠田。

文芸部2年の村崎小枝と山口侑加と共に三日月堂へ足を向ける3人。

コースターの活版印刷から銀河鉄道の夜へ。

弓子の父の宮沢賢治全集。

小枝と侑加のいざこざから、大学時代の演劇部仲間、泉を思い出す弓子。

銀河鉄道の夜のカンパネラを演じた泉とジョバンニを演じた弓子。

物語というのはすごいものですね。宮沢賢治というひとりの人がつむいだものが、こうやってあとの人たちの心になにかを残す。印刷にはそれを助ける力がある。

そして祖父の言葉に続く

生きているものはみな後を残す。それも影のような頼りないものだけど。

すずかけ祭りでの出張ワークショップ!

 

「ひとつだけの活字」

大西君の大学の後輩雪乃は図書館司書をやめて、海外赴任が決まった友明と結婚する。その招待状を亡くなったおばあちゃんとの思い出の活字を使って作りたいと思い立つ。

大西に連れられて雪乃は三日月堂へと。

雪乃の思いを聞いた大西は、先輩でもある智明から、同級生金子の連絡先を聞かれたと打ち明ける。金子は、デザイナー。招待状を彼に依頼していた!?

一方弓子さんは、自分の御用達の「大城活字店」で雪乃の祖父の店「平田活字店」のことが判明する。母型(ぼけい)!!そして祖父の店つながりの「常盤活字店」へつながる。

いろは歌。スペース、改行、高さ。

雪乃の祖母との思い出から、弓子と父親の思い出・星の思い出へ。

弓子の話を聞いた雪乃は、智明に活字の事を話すと金子君も興味を持ち、招待状にとりいれることに!?常盤活字店の漢字と雪乃の持つ一組のカナにて作成!

祖父が、この店が、もう一度外の世界への扉を開いてくれた。

過去がわたしたちを守ってくれる。そうして、新しい場所に押し出してくれる。

たまには弱音を吐くことも必要だな。弱さがあるからつながる、ってこともある。

 

オープニングでハルさんが弓子との思い出を回想した時の「星のキーホルダー」の件もステキに回収されて。。。。

 

 

小さい頃から本を読むのが好きだった。たくさんの文字を見たらワクワクする。

だから、みんなが圧倒される三日月堂の「活字」棚、見てみたい!!

文字の大きさ、ルビの話だとか、スペースの話だとか。活字の並び順だとか、活字を束にしばっておいとく話だとか、そのあたりの話も、ワクワクした。

実際、活版印刷を体験できるって言われても、そのスペースの詰め物とか、シールを張って高さの調整だとかは、手先が不器用な私には。。。きっと投げ出してしまうだろうけどね笑