makiのきまぐれ読書日記

読んだ本を忘れないように。。。

三島屋変調百物語八之続 「よって件のごとし」

宮部みゆきさんの百物語8巻、表題作にして第三話「よって件のごとし」

読メの感想とか見てたら、とにかく怖いみたいな感じだったんだけど、思ったのとは違った。怖くなかったわけじゃないんだけれども、なんていうの?うまく逃げてこられた(?)わけで、今回の語り部の二人、真吾と花江(花代)が三十二年の時を経て、「この一件にかかわった誰にとっても、誇らしくこそあれ、恥じる出来事ではございません」と言い切れる今を生きているから。。。

 

 

奥州久崎藩の夜見ノ池、その池底で黄泉ノ池とつながった奥州江崎藩羽入田村。

都合、こちら側とあちら側と呼ぶとして、こちら側は藩の殿さまもいい人で、おまけに紙すきという特産をもち、割と裕福なのにくらべ、あちら側は、取り立てばかり厳しく村人のことをあんまりかんがえないので、生きていくのさえ、かつかつな村。

そんなあちら側では、「ひとでなし」なる化け物が数年おきに出現。もとは地割れから生まれてくる腐れ鬼なる化け物にかみつかれた人がひとでなしになり、そのひとでなしがたくさんの人にかみついたら腐れ鬼になりはてる。地割れから発生した隠れ鬼は日光に弱く、数日で息絶えるがひとでなしから堕ちた腐れ鬼は、弱みがない。。。人でなし腐れ鬼は、首を落とすことで死ぬけれど倍々ゲームで増えていった暁には。。。

江崎藩のおえらがたは、そんな腐れ鬼やひとでなしのことをずいぶん軽く見ていて、詳しい事を知るものが少なく、おまけに、一度にあまりでてこない、複数個所に地割れが起こることはないという所説を覆し、今、羽入田村ばかりか近隣も、隠れ鬼とひとでなしがわんさかわんさか。。。止める手立てはもうない。。。

あちら側の花江の助けての言葉に応じてこちら側から向かった真吾達。結局はあちら側を捨てて、こちら側に人々を迎え入れることでしか助ける道はなかった。

同じ池でつながってて、石高でいえばそうそう変わらないはずなのに、その差はすごくて、統べる人の力量ってのは、すごいものなんだな~。その辺の対比をうまく描いてるな~なんて、しみじみする。隠れ鬼のことを抜きにしても、こちら側に渡ってこれて、年貢の取り立てから逃れられたことだけでもよかったと語るあちら側から来た人々。結局、こちら側ではあまり長くは生きられないもようだけれども。。。

う~ん。。。

ただ、こちら側でもあちら側でもやはり色んな人がいるわけで。。。

ちょっと頼りないあとつぎ真吾。責任感がとても強い花江をはじめ、ちょっと調子が良すぎるんじゃない?って質屋の門左衛門。残ればすべての田畑が自分のものになるなら残るという巳三になんともまぁ!とあきれれば、弟松吉の身を最後まで案じていた常吉の最後(?)は。。。真吾の父、弟たちも愛嬌たっぷりでこの浅川家のもとでこちら側の村人たちはもちろん、移っていくあちら側の人たちは、幸せになれること間違いなしだ。

 

 

そして三島屋では長男伊一郎が帰ってきた!富次郎のこの先はいかに?そしておちかちゃんのお産は。。。

次作ではまたがらっと雰囲気がかわりそうだけれども、この三島屋シリーズは宮部さんのライフワークだそうだから、楽しみに待つとしよう。

 

でも、富次郎ってなんか、ちょっと違う気がする。。。あくまでも私の好みの問題だとは思うんだけど。。。話を聞いて、絵をかき散らすって言うのは、なんかいただけないんだよなぁ。。。