makiのきまぐれ読書日記

読んだ本を忘れないように。。。

最大の悪霊とされた人こそ実は。。。「孤宿の人」

宮部みゆきさんの昔の本を読み返そうシリーズ(勝手に命名した2021年秋)、第2弾は「弧宿の人」2005年の作品である。

この本は、最初読んだ時に、とてもいい本だと思ったという記憶、悪者とされる加賀さまがホントはいい人だ・・・って事だけ覚えた。

15年ぶりくらいに改めて読んで、やっぱりいい作品だと思ったのである。

 

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物語は、讃岐の国丸三藩に、江戸で妻、子、部下を切り殺した大悪党の元役人の加賀さまが、流刑で流されてきて、それを恐れるあまり住人たちが例年怒っていたことはすべて加賀さまの祟りだと恐れ、おののき、おかしくなってしまうという。。。

主人公は引手見習の宇佐(うさぎ・おあんさん)と、ちょっと頭が弱いと思われる(と言っても、しつけや教育をきちんと受けられなかったがゆえ)「ほう」という少女。

ほうが世話になっていた匙の井上家のお嬢様が琴絵が殺されたことをもみ消すことになったことからいろいろな事件が動き出す(といっても、もみ消さなければならなかったのは加賀さまのお預かりがあったからだが・・)

浅木家での毒殺事件。涸滝での亡霊騒ぎからの刃傷沙汰。日高神社雷が落ちたのは天災だけど、それにまつわる人心の乱れ。井崎の死。渡部の暴走。。。

 

そんな苦しい事ばかりの中、ほうと加賀さまのやりとりがとにかく優しいのだ。

悪霊と恐れられた加賀さまに命を助けられ、手習いの時間を持ち、そして再び命を救われるほう。

ほう。呆。方。宝。

宇佐がそれをちゃんとほうから聞く前に命を落としてしまったのが残念でならない。

でもほうが無事に生きて井上家に戻ったことで、訪ねてきた和尚が知り、井上家の皆も知り、そしてその後の働き先となる塔屋にだって広がっていくのだろう。

 

加賀さまは、屋根に避雷針が埋め込まれてたそのこと事体は知らなかったのね。。っていうか、どのような形で「死」という安らぎを得ることが出来るのか(舷洲先生たちの導き(?という言葉が正しいのか)によって)詳しい事は知らされてなかったんだね。ただ、ほうの一言で、すべての事を察知できる頭脳は、「神になっていただく」のには、ホントに惜しい人物なのだ。悪がはびこる政治の世界は今も昔も理不尽だ。。

 

加賀さまの悪霊によって、乱れてしまった丸海の町が、加賀さまという神に守られて新しく再建されていく。

何とも言えない結末だけど、ほうの人生が、これから幸せであるように願うばかりである。