makiのきまぐれ読書日記

読んだ本を忘れないように。。。

四之続「三鬼」より第四話「おくらさま」

宮部みゆきさんの三島屋変調百物語四之続(第4巻)三鬼より

第四話 おくらさま

 

夢かそれとも化かされたか。。。黒白の間での語り手は香具屋「美仙屋」の美人三姉妹の末っ子お梅。梅は時を15の時に時を止めたと言い、美仙屋の守り神「おくらさま」の代替わりの際の話をした。そして最後に「本当は、おくらさまに守られてなんかいなかった。騙され、祟られていたんだわ」の言葉を残し、消えた。。。

 

夢かそれとも化かされたか。。。一念発起して調べ始めたおちかの傍には富次郎と勘一が。富次郎とは三島屋の次男坊。他家に奉公に出ていたのがけんかに巻き込まれ、九死に一生を得て、三島屋に戻ってきた。勘一は、おしまと付き合いのある古本屋瓢箪古堂の若旦那。

ここで登場するのが「江戸買物独案内」これは、現在のミシュラン。。。といえば大げさだけど、その類だよね。昔から、やっぱりおいしいもの、人気のあるものを人は知りたがる。。。そこで、本屋の若旦那の登場なのである。。。

富次郎とは甘いもの、おいしいもの好きで気が合って、お梅さん探しに協力することになるのである。

 

最新刊六之続まで読んでる私としては、このおくらさまの章で、すっかりと新章の準備が整えられていたことに、ある種、あぜんとする。

 

お勝さんは勘一のことをおちかに「縁のある方」と予言してるし、富次郎も聞き手を引き継ぐ立候補・・・

この世に、あのときの自分よりも恐ろしいものがいるだろうか。あのような無念よりも、悔しい想いがあるだろうか。あれは自分一人のことではなく、人という生き物は、誰でもああいう想いに囚われてしまう機会があるのか。それが煩悩であり、業というものなのか。

富次郎の心も、変わり百物語の人生経験を必要とする、闇がある。。。

 

最初から再読してて、青野利一郎とおちかって、意外に顔を合わせてないんだなと。。ただその割に、その別れが結構な勢いで盛り上がってたので。。。もしかしたら、最近ドラマではやりの、アナザーストーリーがいろいろあったということにしておこう(笑)

それにしてもこの見事なまでの出会いと別れをこの1章で固められていたとは。。。

 

瓢箪から駒が出るように、文字で書かれた読み物のなかから真が転がり出ることもあるというのが由来でございます。

瓢箪古堂の由来をかたり、その言葉は

でもですね、読み物というものは。「生身の人からはもう離れておりますから、枯れております。どう間違ってもあたりませんし、障りません。気散じにはうってつけの上に、読み物を通して知識が増えれば、肝っ玉が強くなって、語りにあたりにくくなりますから一石二鳥

変わり百物語を聞くことによって、心の手当てをしているおちかに対し、作家の宮部みゆきさんが、「読書」をすすめているようで、これまた面白い。勘一に、「商売をしようという魂胆では・・・」とまで言わせているところが二くらいい(笑)

 

「お梅さんは、何者だったんでございましょう」

三島屋に、大きな風を吹かせた語り手であったことは、これ、まちがいない。