makiのきまぐれ読書日記

読んだ本を忘れないように。。。

四之続「三鬼」より第一話「迷いの旅籠」

宮部みゆきさんの三島屋変調百物語四之続(第四巻)「三鬼」

第一話は、めずらしくこの私が良く覚えているお話「迷いの旅籠」

 

とある村で、お殿様が娘をなくしたのを機に、村のお祭りを禁止した。しかし村のお祭りは田圃の神様を敬うための祭りだから、やめるなんてことをしたら凶作になる。そんな村人の心理を利用して、ある絵描きが死者をよみがえらせたいという望みに便乗したというお話。。。。

 

そのお祭りというのが、雪深い冬から、春が来ましたよって行燈をともして神様に目覚めてもらうためのお祭りで。。。

 

山の鳥たちは、どうやって季節を知るのだろう。鳥には鳥の暦があるのかなぁ。今はさえずりも聞こえないのに、行燈祭りが済んで立春が来ると、途端に賑やかになる。

と語り手のおつぎちゃんが、不思議に思うくだりがあるのだけれども。。。

私もよくそう思う。私の場合は、鳥のさえずりじゃなくて、畦道に咲く彼岸花。誰が暦を詠むわけでもないのに、ちゃんとそのころに咲き誇る様に、いつも感心する。

 

行燈祭りで、四季折々の景色とそれに伴う人々の営みを絵に起こす場面があるのだけれど、農家のひとは特にだと思うけど、季節とともに生かされている人間が、お祭りというこれまた一つの季節の移り変わりの行事をとても大切にしているのが、いとおしい。人々の色んな思惑が重なり合って、ちょっとおどろおどろしたものになっちゃったけど、でも、なんか、心が浄化されたような気分になった気がする。。。

 

そして、最後に守り人お勝さんが言う一言が身に染みる

わたしどもはみんな、いずれ死ぬまでは、どうしたって生きなくっちゃならないんですから。

 

人は生を受けたその瞬間から、死に向かっている。。。そういう人もいるけれど、私はやはり、「生きる」方に重きを置きたい。そうしたって生きなきゃならないのなら、楽しい方がいい。過去を振り返って悔やむより、未来に希望を見出したい。死んだ人を惜しむより、新しい出会いにワクワクしたい。。。(!?)

 

だから、この物語で、死んだ人を生き返らせたいと願う一のお殿様(堀越様)や絵師の石杖先生、死者の世界へ足を踏み出してしまった貫太郎さんを悲しいと思う。亡者でも傍にいてもらいたいと思う。半面、神社からご神体を盗むという暴挙に出てしまった一平だけど(その行動は、ちょっと、いやかなり怖い!!)妹おつぎとともに別れをきっちりと選択できたのは、いいお話だ。

 

そして、おちかが、名主さん、さらには、お殿様までをも、がつんと遣り込める感じがきっととてもすがすがしくて、私はこの話をよく覚えている所以なのだと思う(^^)