宮部みゆきさんの三島屋変調百物語三之続(三冊目)泣き童子より、表題作「泣き童子(わらし)」
このお話は、とにかく恐ろしい・・・三之続は、女の子同士の内緒話、子供のかくれんぼにまつわるお屋敷と、わりと、和やかな話が続いていたのが一変!!
いや、物語のスタートの三島屋は、恒例の「ねずみ祭り」で楽し気な雰囲気がまだ全然続いていたのに。。。
泣き童子 そう、言葉はしゃべらないのに、ある特定の人物の前で盛大に泣く赤子の話。何が恐ろしいって、故あっての恐ろしさじゃないところ??
捨て子だった赤ん坊の末吉が、縁あって子だくさんの看板屋さんに引き取られ、愛情こまやかに(とは書いてないけど、なんとなくそんな感じだよ!)育てられた。あやせば笑うし、ばぶばぶも言ってたのに、全然言葉をしゃべらない。しかしある日突然、ものすごい勢いで泣きだした。。。調べに調べた結果、ある奉公人の傍に寄るとと泣くらしい。ただ、赤子が泣くというだけで、その奉公人を悪く言う理由もなく、仕方なく、語り手の差配人が引き取った。赤子が来たその日に、看板屋は泥棒一味に押し込まれ一家惨殺。赤子が嫌った奉公人が手引きをした模様。。。
ここまでだと、この赤ちゃんは、泥棒一味の危険を察知して、危ないよって知らせてた。。。泣く事しかできなかったけど。。。って話なんだけど。
赤子を引き取った差配人には娘がいて、ある日娘が家に帰ってきたら、その赤子が泣きだした。そう、話に聞いてた奉公人が近づいたときの泣き方。娘におまえは何をした?と問いただすと、実は人を殺してきたという。お蔵入りになったその殺人だけど、赤子は娘の前では泣き続ける。娘は赤子を階段から突き落として殺してしまう。。
その後、娘は結婚して、男の子を生むのだけれど。。。その男の子がまたしゃべらない。そして、昔、娘が人を殺したその同じ日に、赤子は母を見て大泣きする。。
娘は自殺。かけつけた差配人は、その子供をさらうように家に連れ帰る。
じじい、おれがこわいか。
その声に、恐れおののいた差配人は、その赤子、自分の孫を殺してしまう。。。
確かに、娘が人殺しをして、その罪を償うことがなかったのは良い事ではない。
ただ、なぜ、その赤ん坊が、めぐりめぐって、この差配人親子のところにやってきてその親子を共に殺人者にしてしまったのか?
もとはといえば、お世話になった看板屋に、押し込み、皆殺しの惨事を引き寄せたみたいじゃないか??
誰に咎があったという??
魑魅魍魎のたぐいは、そりゃぁ恐ろしいかもしれないけれど、実はホントに怖いのは人の心。
でも、この赤子は一体何者!?
得体のしれない、心の芯までぞっとする。そんなお話なのでした。