三之続「泣き童子」より「くりから御殿」
宮部みゆきさんの三島屋変調百物語三之続(3冊目)泣き童子より くりから御殿
「からくり」を間違えて覚えた幼馴染が「くりから」と言っていたことから語り手の長治郎が名付けたのがくりから御殿。
山津波(土砂崩れ、土石流とかいうやつだね)に飲まれた町から一人だけ生き残った長治郎が、行方不明だった仲良しの幼馴染みいちゃん、はっちゃん、おせんちゃんが戻ってくる前に、夢に現れてかくれんぼをした。
大人になって、三途の川を渡ろうとしていた時にその三人が、「長坊はまだや。いっっぺんお帰り」と突き放した。三人が生き残った自分を責めていると感じる長治。実は裏でその語りを聞いていた長治郎の嫁、陸さんが、「三人はそんな子じゃないでしょ!」って長年の長治郎の悩みを晴らしてあげる心温まるお話だった。
そんなお話なんだけど。。。村の発展を願って山からせっせと木を伐り出したばっかりに起こってしまった山津波。
おちかから話を聞き終わった伊兵衛の言葉が身に染みる。
「天変地異には、私らはどう抗うこともできないよ。せめて火の用心ぐらいはと・・・」
ここ数年、自然災害に打ちのめされ続けてる日本列島。この作品の初出が2011年だというから、それは東日本大震災の年。宮部さんもいろいろ思うところがあったんだろうなと思われる。だからあえて、伊兵衛の口を借りて言ったんだろう。
自然災害であるけれども、もとをただせば人災であるとも言えないわけで。
そんなつらい現実だけど、仲良しの子供たちのエピソード、そして夫婦の愛。それが人が生きていく縁となるんだよ。
宮部さん描くこの三島屋変調物語は、つらい話の中に、あったかさがある。何度読んでも、泣き笑い。。。(^^)