事続「あんじゅう」より第三話「暗獣」
宮部みゆきさんの三島屋変調百物語の2冊目(事続) あんじゅう
そのタイトルにもなってる 第三話 暗獣
6巻まで出てるけど、その今までの中で、一番と言ってもいい、大好きなお話。
くろすけと、加登新左衛門、初音夫婦のあったかくも悲しいお話。
その話の前に。。。
この物語は、前回にも書いたけれども、不思議物語と、三島屋の出来事が見事にリンクしているわけで。
この変わり物語に行きつくまでに、三島屋の丁稚新太が手習所であざをこしらえて帰ってくるところから始まる。喧嘩の相手は、直太郎。父親が火事でなくなり越してきた。でもその火事にはいろいろとうわさが付いていて。そんな直太郎を案ずる前の住居で通っていた手習所の若先生青野様。直太郎を心配する金太、捨松、良介の腕白三小僧!
おちかちゃんが、一気に外の世界とつながったお話となる。
どうでもいいんだけれど、やっぱり惚れっぽいおちかちゃん!?でも、これは相思相愛か・・・( *´艸`)って話は、やっぱりどうでもいいです・・・💦
直太郎の父親が亡くなった屋敷のいわくを実はこの青野先生がご存じでして。その屋敷こそが変わり物語の舞台となったお屋敷。青野先生の御師匠さんが新左衛門夫妻だった。。。人の縁とは不思議なものです。これを、フィクションならではのご都合主義といわず、私は宮部さんの力量であると、信じている。。。
だってね。おちかちゃんのセリフとして言うんですよ。
「たまたまの上に、又聞きだから、さらに重みがなくなる・・・」って!(笑)
たまたまが曲者だとも言ってたっけ!?でも、だから、人生は面白い!?
変わり物語は。。。私が前回読んだ時に我ながら上手にまとめてると思うのを引用。
不幸があって、幽霊屋敷だとうわさされる紫陽花屋敷。隠居をきめこんで、そんなところなら静かでいいだろうと、あえて好んで住人となった新左衛門夫婦。そこで、出会った幽霊の正体は。。。黒い小さな塊のいきもの。まっくろだから、くろすけと名付ける。夫婦はくろすけをわが子のように、(愛犬のように、愛猫のように?)かわいがりくろすけも、老夫婦が大好きだった。しかし、その愛情は、くろすけの存在、命をおびやかすことに。。。老夫婦の決断は。。。
何といっても、新左衛門が面白い。こんな記述がある。
だが彼は、人というものが億劫でたまらなかった。人は皆、嘘つきだ。
些細な衝突でも、双方がそれぞれ己の都合のいいように事を曲げて主張して憚らない。旨い話には見境なしに飛びつき、事を仕損じれば言い訳に終始するか、他のものに責任をなすりつけようとする。せせこましく、小ずるく、情けない。そのくせ欲深い。
うへぇ。である。
良くもこうも見事に、人間の愚かさをばっさりと言い切ってしまった!!わが身に刺さりすぎて思わず、付箋はりそうになっちゃいましたよ(^^;
最近、上司の悪口ばっか言ってる自分に。。。言い訳とか、責任のなすりつけとか。。心、痛すぎます(-"-)
そんな彼が、くろすけと交わり、別れの時に言うのです。
おまえはまた独りになってします。この広い屋敷に、独りで住まうことになる。
だが、くろすけ。同じ孤独でも、それは、私と初音がおまえと出会う前とは違う。
私はおまえを忘れない。初名もおまえを忘れない。
なぁ、くろすけよ。おまえは再び孤独になる。だが、もう独りぼっちではない。私と初音はおまえがここにいることを知っているのだから。
そして、その後、新左衛門は、やっかいな子供たちを相手にする手習所の先生となる。
新左衛門が変われた。おちかも変われる。誰だって、変われるんだ!!
そういうお話ですね。。。
私は、なんだかんだと言って、喉元過ぎれば熱さを忘れる、第一人者であるからしてつらい事でもすぐ忘れちゃうけど、反省して、こうあらねばと心に決しても、これまたすぐ忘れちゃう(^^;
だから、変わる、変われるってことには無縁というかなんというか。。。
ただ、くろすけの、自分の身が危うくても、人を恋しく思う気持ち、人に優しくなれるそんな無垢な心が、とてもとても愛らしくて。
初音さんの、そして小難しい事ばかりいう新左衛門さんの、くろすけに対する愛情に心締め付けられて。。。うれしかっただろうな。憤っただろうな。怖かっただろう。切なかっただろう。寂しかっただろうな。そんないろいろな気持ちを味わえて、涙を流して、心暖かになった。だからこのお話は、細かいこと忘れようとも、いつも大好きなお話として、頭に残っているんだろうなと。
鯰髭の役人とか、怪しげな軍紀語りの諸星主税とか、黒子の親分とか奇抜な登場人物も様々だし!確か。。。黒子の親分って後にまた、出てきたりしなかったっけ!?
忘れっぽいというのも、何度でも楽しめるということで実はお得なんですよ!というのは、物は言いよう、考えようです♪(^^)v